ねいぴあの雑記帳

ドミニオンとか将棋とかミステリとか脈絡のない雑記帳

2018.5月 読んだ本

北山猛邦  『クロック城』殺人事件

 

感想:

第24回メフィスト賞受賞作。最近好んで読んでいる北山猛邦のデビュー作。

一般的な氏の作品への印象としてあるのは”物理の北山”と呼ばれる物理トリックと、終末的なイメージの世界観かと思われます。少なくとも自分が調べてみた感じだとそうでした。

しかして本作は滅亡が間近に迫る世界が舞台となっており、後者のイメージがゴリゴリに押し出されている文体で、メインの謎である衆人環視の密室の解明も豪快な物理トリックが用いられています。が、しかし。「SEEM」や「十一人委員会」、「ゲシュタルトの欠片」などの終末世界のガジェットが掘り下げが足りていない感じがしますし、物理トリックも真相がわかりやすく感じられました。

上記のような感想を持ちながら読み進め、密室の謎も明かされ、「・・・これでメフィスト賞?」と思っていたらまだまだ残りのページが。

緊張感あふれる脱出劇や2つの巨大勢力の対峙、その対峙の間での推理合戦、そこで明らかになる大量の真相など、そこからの怒涛の展開は前述の不振を払拭するのに充分なもの。特に最終盤で明かされる本格ミステリ特有の”アレ”の理由には度肝を抜かれ、「・・・これは確かにメフィスト賞だ」と認識を改めざるをえませんでした。

 

前述の難点はあり、読む人を選ぶかもしれませんが、傑作と呼んで差し支えない作品かと思います。

 

 

 

相沢沙呼  午前零時のサンドリヨン

 

感想:

第19回鮎川哲也賞受賞作。いわゆる「日常の謎」モノで、高校一年生の語り手の恋愛描写も絡む青春モノの連作短編集。

この手の片想い中の男子高校生が語り手の小説を読むと、なんとも形容し難い胸のザワつきを覚えるんですよね。大学生活の後半の方で『とらドラ!』のアニメをぶっ通しで視聴したことがあるのですが、そのときに感じたものと近いものがあります。共感してもらえますかね、この感覚。

 

それはさておき。軽い、ポップな文体で描かれた本作は各章の謎も魅力的で解決もスマートに感じられました。最終章でのクライマックスも意外性に富み、また、臨場感あるものに仕上がっていて大満足。鮎川哲也賞は新人作家に贈られる賞ですが、それを感じさせない読み応えのある作品でした。

また、探偵役のヒロインはマジシャンという設定で、随所にマジックネタがみられるのですが、マジックを見るのが好きな自分としてはその点も好印象。(特定のマジックのネタばらしがあるわけではないです。念のため)

 

早坂吝  誰も僕を裁けない

 

感想:

"援交探偵  上木らいち"シリーズ第3作。講談社ノベルスで読んだんですが、裏表紙のあらすじにもあるように、「エロミスと社会派の融合」を謳っている本作ですが、企みが成功しているかというと、個人的には微妙なところ。

「法」というものに仕事で触れ、本作で描かれていることは法の持つ一面としてある程度当然のものとして認識しているからかもしれませんが。

あと、作中で扱われている殺人事件の真相も大半が見えやすくなっており、シリーズの前二作のような奇想天外な仕掛けがほとんどないのも微妙だったかなと。

 

ネガティブな評価をつらつら書いてきましたが、もう一人の視点人物、戸田に関してのプロットはそうまとめますかと膝を打ちました。読み進めていく中で、プロローグと矛盾が生じてないか?と思っていましたが当然そんなことはなく、美しいエピローグに仕上がっています。

 

前2作のようなトリッキーさはないですが、シリーズモノで毎度同じ展開を繰り返しても食傷気味ではありますし、これはこれでアリなのかなという印象です。

 

 

中山七里  連続殺人鬼カエル男ふたたび

 

感想:

「連続殺人鬼カエル男」の続編。続編が出るとは全く思っていなくて、書店で見つけて即購入した一冊です。

シリーズものって、どこから読んでも大丈夫なものと、順番に読むべきものがありますが、このシリーズは明らかに後者ですね。

 

ストーリーは前作でもお馴染み、渡瀬と古手川の刑事コンビの活躍や、刑法第39条の是非など、警察小説と社会派ミステリが融合したような印象を受けます。

特に、作中で渡瀬の語る責任能力の無い犯罪者への処遇の歴史については一読の価値あり。まぁ、近代法ができてから今日までそのようなルールでやってきた、だから正しい、と盲信するのは危険で、より良いルール作りは心がけていくのは当然ですが。

 

事件の真相については、終盤のどんでん返しを得意とする作者らしい仕上がり。フェアかアンフェアかで言えばかなり綱渡りのような気がしますが、あのラストにもっていくためには致し方ないでしょう。

 

ちなみに、作中で登場した弁護士御子柴が主役の別シリーズも興味があるので、読んでみようかなと思っていたり。

 

 

天祢涼  銀髪少女は音を視る

 

感想:

「キョウカンカク」シリーズの第3作。今作から”ニュクス事件ファイル”なる副題がつき、発行レーベルも講談社タイガに変更されています。

 

美夜と相棒の警察官・一路のコンビで犯人の”ジェネシス”による電話での指示によりミッションをこなしていく様は「ダイ・ハード3」っぽいなーとか思ったり。しかし、奮闘むなしく次の事件が起こってしまうのですが、そこからの展開は二転三転めまぐるしく動いていき、予断を許さない展開から導き出される結末は予想だにしないもの。

ただ、意外性に富んだプロットではあるのですが、分量が少ないせいかやや駆け足で後半部分が進んでいってしまったのは残念。前回までの講談社ブックスならちょうどよい長さに仕上がったのかなと。

 

あと、これは個人的に残念だったことですが、もうちょっと矢萩さんの出番がほしかったです(笑)

 

天祢涼  透明人間の異常な愛

 

感想:

 「キョウカンカク」シリーズの第4作。街中での捜査がメインだった過去3作と異なり、今回は密閉された研究所で”透明人間”との対決という趣向になっています。

 

美夜の共感覚を用いてどう”透明人間”に勝つのかがメインですが、ところどころそれだけでは終わらないことがわかるある人物の独白混じりでストーリーが進んでいき、不穏な雰囲気を感じさせます。

 

緊迫感ある”透明人間”との幾度かの対決を終え、明らかになるある人物の正体はかなりのサプライズ。シリーズの方向性が示される仕上がりで、続編も楽しみです。

 

麻耶雄嵩 化石少女

 

感想:

名門の私立ペルム学園の古生物部の部長まりあを探偵役、部員の彰をワトソン役に据えた学園モノの連作短編集。

まりあの繰り出す豪快な、そして破壊的な推理や、彰の章を追うごとに苛烈になっていくブラックジョークなど、楽しく読める一冊です。

ただ、それで終わらせないのが麻耶雄嵩。探偵とワトソン役のあり方を追求し続けている麻耶雄嵩らしいラストは大満足。最終章の「赤と黒」のタイトルの意味がわかったときは膝を打ちました。

 

…それにしても、某有名ミステリ漫画並みに殺人事件が起こるこの学校大丈夫なのかと思ってしまうのは野暮なんでしょうね。

ドミニオン今日の一枚 〜工匠〜

不定期連載です。そもそも連載にならなかったらごめんなさいということで。

 

ことの発端は最近ドミニオンの記事書いてないからそろそろ何か書こうかなーと考えていたところ、ヒロタシさんからこんな企画が。

 

 乗っかってみたところ、指定は「工匠」

 

 

 

 

 

工匠

コスト5
アクション

+1カード

+1アクション

+1金

手札を任意の枚数捨てる。捨てたカード1枚につき1金のコストを持つカードを獲得して山札の上に置いてよい。

 

手札が多ければ多いほどできることの選択肢が増えるためよく、逆に常時ハンデスが飛んでくるような場では購入は控えるべきでしょう。また、デッキトップに置くのは強制で、勝利点獲得時には次のターンが弱くなるため注意が必要。

 

ドミニオンの5コストのカード群には、ゲームへの影響が強いカードが多数あります。

例えば、総督、香具師、立て直し、拷問人、大使館などが挙げられるかと思います。

で、この工匠というカードも5コストですが、上記のような単体でゲームの支配力が大きいカードではなく、他と組み合わせて強みを発揮するカードですね。

 

以下に相性のいいカードを挙げていきます。

 

「手札がn枚になるまでカードを引く」効果を持つカード(書庫、望楼、よろず屋など)

 

これは言わずもがな。例えば3枚捨て札にしてトップに銀貨を乗せ、上記のカードで引くだけでもそのターンの出力は相当でしょう。

特に工匠ー書庫はドミニオンの日々でも紹介されています。

 

d.hatena.ne.jp

 

 

山札トップを参照する効果を持つカード(家臣、秘術師)

 

工匠の効果による獲得時はデッキトップに乗ります。そのことを生かせるのは上記2枚。家臣はアクション獲得時に、秘術師は何を乗せても必中です。

 

移動動物園

 

手札からカードを捨てることにより、手札の被りを解消することができます。移動動物園は容易に3ドローできるでしょう。

 

なお、工匠の効果で捨て札にした際の獲得時効果は任意です。そのため、2枚捨てたいけど2コストのカードが屋敷しかない・・・というときにも気兼ねなく捨て札にできます。

 

策士

 

前述のとおり、工匠使用時に手札が多ければ多いほど獲得できるカードの選択肢が増えます。

村鍛冶や研究所連打で手札を増やすのも当然相性はいいわけですが、策士があればお手軽です。

d.hatena.ne.jp

またドミニオンの日々からの引用になってしまいますが、工匠と策士だけで策士ループの完成です。知る限りでは最も簡素な策士ループだと思います。

 

会計所、開拓者

 

相性バツグン…とまではいかないですが、カード獲得のために捨て札にした銅貨を手札に加えることができるため、組ませるのは一考の余地ありかも。

 

コストを下げるカード(橋、街道、橋の下のトロルなど)

 

捨て札にする枚数が少なくなります。重ね掛けすると・・・?

 

公爵

 

ハンデスのない場であれば、工匠使用時には必ず5コスト以下のカードが獲得できます。かき集めたい5コストのカードといえば…公領公爵の組み合わせ。獲得時にデッキトップに乗るのは癪ですが、工匠数枚挿して公爵ルートはアリだと考えます。

 

ただし、工匠引かないと公領公爵獲得できないようなデッキだと工匠被りやデッキのどの位置で工匠引くのかによって不安定ですし、他のプレイヤーも参戦すること考えると何枚工匠入れるのかも研究の余地ありですね。

 

 

 

さて、ここまでは相性のいいカードを挙げていきました。これでこの記事を締めてもいいのですが、お題をもらって工匠というカードについて考察していく過程で一つ気がついたことがあります。

それは「手札を任意の枚数捨てる。捨てたカード1枚につき1金のコストを持つカードを獲得」という効果について。

これって物置の「手札から任意の枚数を捨て札にする。捨てたカード1枚につき+1コイン、+1購入」という後半部分の効果と似ていません?

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例えば、”工匠使用し手札から3枚捨てて銀貨獲得、購入フェイズで残りの手札からカードXを購入”と、”物置使用して3枚捨てて+3コイン、購入時にカードXと銀貨購入”はそのターン獲得したカード内容は同じものです。

 

ということは、物置の後半部分の効果と相性のいいカード・戦術は工匠とも相性が良いわけで。

物置の後半部分を生かすコンボといえば、いわゆる「念視の物置」が挙げられます。①圧縮をかけて②アクションカード・念視の泉を多数獲得。③念視の泉で引き切った後に④物置で念視の泉以外のアクションカードを捨てて大量の仮想コインを出力し、⑤手札に残った念視の泉で再度引き切り以下④に戻り、最終的に大量コイン・それに見合う購入で勝利点を買い占めるワンターンキルのコンボですね。

工匠でもこれができます。すなわち、上記④部分でアクションカードを8枚(植民地場なら11枚)捨てて属州獲得、再度引き切って・・・とすれば。

ただし、注意点として、獲得した勝利点カードは必ずデッキトップに乗るのでアクションカードを捨てるときに手札に念視の泉とキャントリップの2枚は残しておく必要があります。(上記⑤でキャントリップで勝利点を引き、その後念視の泉で引き切りという手順になります)

 

念視の物置と異なる部分は、村系カードが必要ない事でしょうか。工匠も念視の泉もキャントリップですからね。

 

 

さて、ここまで工匠について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。カード単体の紹介は実は初めての試みでしたが、簡潔に文章をまとめるのは難しいですね。

 

今回は企画に乗っかった形での更新したが、今後も書きたいことがあれば随時更新していければいいなぁと考えています。

Nightカードについての注意点

ドミニオンのことについて筆を取るのはえらく久しぶりな気がします。忙しくて気力も体力も磨耗しきっていて、stefドミ触らない期間が長かったせいだと言い訳させてください。

 

今回触れるのは新拡張、Nocturneから登場したNightカードについてです。

 

 

そもそもNightカードってなに?

 

 

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↑の画像のように「夜」を意識して黒っぽい色合いのカードで、カードの属性はそのまま「夜」または「Night」と記載されます。

購入フェイズ終了後に新たなフェイズである「Nightフェイズ」で手札にあるNightカードを好きな枚数だけプレイできます。

 

 

注意点その1  (一枚を除き)アクションカードではないこと

 

まあ、今回書きたいはすでに上記のNightカードの説明で触れてはいるのですが。より具体的に書いていきます。

 

まず1つ目として、Nightカードはアクションカードではないことが注意点として挙げられます。(一枚だけ、人狼はカード属性にアクションも併記されています)

カードの効果としては既存のアクションカードに近い効果を持つものもあるのでややこしくはあるのですが。

 

さて、アクションカードではないからなんなのさというと下記のようなプレイ中の注意点が挙げられます。

 

・鉄工所で獲得時の+1アクションのボーナスがない

・金物商の効果で山札から公開しても+1アクションのボーナスがない

・市街の効果で手札公開したときに、手札にあってもドローできない

・念視の泉で山札から公開した場合、そこでドローが止まる

カササギの効果で山札から公開してもカササギは増殖しない

・家臣の効果で山札からめくれても使用できない

 

などなど…

 

要は「アクションカードであった場合」系の効果は全て得られないということですね。

 

 

注意点その2  使用タイミングは購入フェイズ終了後であること

 

Nightカードは購入フェイズ終了後のNightフェイズで使用することは先に述べた通りです。

では、そのことが与える影響とは?この項では解説を加えながら挙げていきます。

 

・策士を打ったターンには使えない

 

 

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策士の使用時効果は「手札を全て捨て札にする、そうした場合次のターン開始時に+5カード、+1アクション、+1購入」です。つまり、アクションフェイズ→購入フェイズ→Nightフェイズの順でゲームは進行するため、打ちたいNightカードがあっても策士を打ったターンはアクションフェイズですので、手札のNightカードは捨て札となり使えません。

 

ちなみに、筆者はstefドミで夜襲を複数枚絡めた策士ループ組もうとして悲惨なことになった過去があります。

 

 

・相手の呪いの森が持続中は要注意

 

 

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呪いの森のアタック効果は、「カードを購入したとき、手札全てを任意の順番で山札の上に乗せる」です。前述の通り、購入フェイズ終了後にNightフェイズがくるため、カードを購入した瞬間はまだNightカードは手札にあります。そのため、カードを購入したターンはNightカードが山札の上に移動するため打つことができません。どうしてもそのターンにNightカードを使いたければ、何も購入しないか、イベントの購入のみに留めましょう。

 

 

・焚火で廃棄できない

 

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イベントである焚火の効果は「このイベントを購入時、場に出ているカードを2枚まで廃棄できる」です。

これまで繰り返し述べてきた通り、Nightカードの使用タイミングは購入フェイズ終了後。つまり焚火を購入するときには場に出ていないので破棄できません。

不要になったNightカードは焚火では廃棄できないということですね。

 

以上に注意して新要素であるNightフェイズを堪能しましょう!

 

2018.5.13 県名人戦 その3

準決勝でヨレヨレになりながらもなんとか決勝へ。決勝の相手は昨年から県大会に出場し始めた元奨励会3段のK氏。全国大会いけば元奨の人達と当たること考えれば、こんな地方の県でその練習ができるというのはありがたい一方、倒さないと全国大会には出れないと考えると一長一短ではあります。

ただ、定期的に格上のレベルの将棋に触れあえる機会があるメリットも踏まえると、個人的には大きなプラスだとは思っていますが。

 

 

勝戦

 

決勝はお相手K氏のツノ銀中飛車居飛車穴熊で対抗。準々決勝・準決勝ともに対抗形の将棋で居飛車穴熊で勝ってきたのでゲン担ぎ。

 

下図は5五の地点で歩交換したところ。

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敵陣の形を乱すチャンスと思い☗6五歩としましたが、どうだったか。以下、☖5一飛☗6四歩☖同銀☗8六角の展開を読んでいましたが、K氏はばっさり☖5七飛成。

飛車桂と金銀の交換で、二枚換え未満かつ玉側の桂が消えるので、軽視していましたが、前述の進行に不満なら確かにこれしかないところで、もうちょっと考えてからやるべきところでしたね。

☗同金☖6五桂で考える。

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普通は☗6六(6八)角として、☖5七桂成☗同角の下図の進行が想定されます。

 

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ここで気にしたのは☖5六金。角を7九か3九に逃げて☖5七歩で大駒が使えない展開は自信なし。というわけで、渋々☖6五桂の局面で☗6七金寄としたのですが、これではなんのために☗6五歩としたのか謎ですよね。

ちなみに、局後に準決勝で対局したS氏に「☖5六金なら☗6八角として9五や8六への転換を見れば先手良しでは?」と指摘されたのですが、確かにその通り。☖5六金☗6八角に☖6七銀が厳しいと即切り捨てたのですが、よく考えれば☗9五角が切り札になりそうで後手としてもやりずらいですよね。

感想戦でK氏の予定では、上の図から☖4五歩とのこと。それであれば☗5六歩と敵の打ちたいところへ打ての格言通りで難しい戦いが続いたような気がします。

 

本譜は☗6七金寄☖7七桂成☗同金寄に☖4五歩とされ、苦戦を意識しつつ進行。

 

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しばらく進んで上の図に。

直前の☗8六香は手応えある香打ちでしたが、じっと☖9四歩とされてここで何も無いんですね。次に☗7三桂打の狙いで☗8五桂としましたが、じっと☖5二銀左とされて観念しました。後手陣の金銀の連結の良さたるや・・・

一歩でもあれば話は違うんですが、あいにくの歩切れ。

 

このあとは丁寧に指されて全く勝負所がこないまま終局。

 

 

勢い込んで☗6五歩と喧嘩吹っ掛けたのはいいですが、誤算があったとはいえその後の指し手は消極的過ぎましたね。☖6五桂に角を逃げなかったのは、相手のネームバリューにびびってしまってその後の進行に自信を持てなかったのも一因のような気がしています。

 

代表取れなかったのも残念ですが、将棋になっていなかったのも輪をかけて残念。せめて次当たるときはもうちょっと好勝負を演じたいものです。

 

 

2018.5.13 県名人戦 その2

 準々決勝を予想外の快勝で終え、準決勝へ。

 

対戦相手は前の記事でも出てきたS氏。↓の記事です。

 

napier2784.hatenablog.com

 

去年のこの大会の決勝でもあった対戦カードで、代表決定戦でよく当たっているイメージがあります。

 

準決勝

 

準々決勝に引き続きノーマル四間飛車居飛車穴熊。後手3二銀型に6八角型で対抗して下図。

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局後に対局相手のS氏から指摘されましたが、この局面って1筋の突き合い入っていれば阿部健治郎プロの名著『四間飛車激減の理由』に載ってますよね。正直忘れていましたが。

言い訳すると、全国大会出てもノマ四間と当たることはほとんどなく、勉強する優先順位が低いってのと、社会人になってから定跡本が覚えられなくなってきているんですよ。中高生の頃の記憶力戻って来ないかなー

 

・・・話がそれました。正解手は実際に本で読んでいただくとして、本譜は☗4六歩☖同歩☗同銀と進めます。このときに良くある反撃筋の☖6五歩には☗5五歩で受け止められます。(このときに後手の5筋の歩が5四なら☗5五歩☖同角☗同銀☖4九飛成に☖4六銀とするしかなく、振り飛車に正確に指されると先手悪い。)

 

どうしてくるかと考えていたら(☗4六同銀の局面における後手の正解手も前述の『激減の理由』に載ってます。マジであの本情報量多すぎてすべてを理解するの大変)、S氏はじっと☖4一飛。

 

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☗4五銀で押さえ込み完了・・・と考えていたら☖1五角があるんですよね。1筋側の端歩はよく「居飛車の税金」と呼ばれていますが、滞納したツケがまわってきました。ここで☗1六歩とするようでは証文の出し遅れ。このあたりから本局の作りにチグハグ感が出始めます。

 

 

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ちょっと進んで上の図に。角の動きを楽にするために4五の位を取りましたが、この地点は銀や桂が進む地点。今見返すと4七から打つべきだったのですかね?

さて、この局面で方針がさっぱりたたずに苦心しました。☗3五歩は流石に無理だし、☗6五歩も☖7七角成で取る駒がない。やるなら5七~6八~7九と銀を引きつけ松尾流に組むか。ただ、☖5五歩とか☖4六歩とか気になりますよね。

ただ悩んでも時間はすぎるばかりなので、手渡しで☗1五歩☖1二香☗2九飛☖9二香と進行。☗2九飛で将来の3六歩の当たり弱めたのでそろそろかと判断して☗3五歩を決行しましたが、☖9六歩で青褪める。

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わざわざ☖9一飛車の余地作って端攻め準備万端のタイミングで、なぜ歩を渡す動きしてんの!!

 

しまった、やらかしたー・・・と呆然としながら下図に進行。

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とりあえず歩は渡せないと思い☗3四歩。そうしたら☖1一角と引かれて3六に傷もできてしまい、受けるなら☗2六飛だけど、ついでに飛車先切った方がいいか、と☗2四歩☖同歩☗同飛。

何かのはずみで☗2二歩で角筋シャットアウトできるし、ここは☖2三歩でそこで☗2六飛としてなんとか端攻めもちこたえられたら御の字・・・とか考えていたら☖9七桂成でさらに青褪める。

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飛車死んでんじゃん!!!

 

☗同銀☖2三香に☗3三歩成で犬死ではないものの、一瞬だけ本気で投了考えました。

 

結構進んで下図。

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とりあえず大駒は取りかえしたものの、☖5六と☗同金☖9四歩で今度は角が死ぬ。ここまで悪くなったら考えても仕方ないので☗8四角と特攻。悪くなってしまったものは仕方ないので、相手玉の陣形に傷をつけておかないと逆転はあり得ない。

8四でバラして☗6五歩とちょっかいを出した下図。S氏に決め手があります。

 

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ここは☖6七角とすればほぼ終了。受けるなら☗6八桂しかないですが、☖7八角成で絶望。

本譜は☖8五桂☗8八銀引☖9五歩ですが、☗8六銀が根性で打った銀。駒の損得が関係ない玉頭戦にもちこんでワンチャン狙い。正直、物量差が酷いので、ひっくり返すのならばそれしか望みはないと思って指していました。

 

そんなこんなで進んで下図。一旦☖9六歩と取り込んだ歩を成り捨ててこの図になっているあたり、後手も変調をうかがわせる進行です。

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 ここから☗9六桂☖8三歩☗4二角☖6三金引☗2四角成と進みもしかしたら逆転したかもと手ごたえを感じました。2四の馬が将来的にいいポジションに設置できそうですし、6八に利いているため横からの攻めをほぼほぼ食い止めています。そしてなにより、9六の歩を成り捨てたことがマイナスになっています。

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あきらめずに頑張っていればいいことあるもんですね。

とはいえ、油断は禁物。このあとも玉頭でのねじり合いを続けて約40手後。

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ここで安直に☗9六銀として自玉の安全を図ろうとすると☖9七歩で怪しい事になります。そのため、☗7四歩からたたき合いへ。

以下、☖8八桂成☗同銀引☖9六歩☗7三歩成☖同金☗9六銀☖9七歩☗同銀☖同角成☗同桂☖9六飛と進んで下図。

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自玉が詰まなければ詰めろをかけて勝ちに見えます。が、しかし。読み切れないので本譜は☗8八銀。ソフトにかけるという事をしない文化圏の人間なので正解はわかりませんが、詰んでいなかったと思います。ただ、詰まなかったとしてもうっかり逃げ間違いで頓死とかもありえるので、この判断は正しかったと思います。

以下、☖6九銀☗7七金寄☖7四香が詰めろではないので(さらに言えば☖6九銀も詰めろではないのでそこで相手玉に詰めろかけるべき)☗5三角としてやっと勝ちを手繰り寄せました。

 

最後はS氏の頑強な抵抗に遭って総手数191手。お互いに悪手や決め手を逃すなどしたせいで大熱戦に。久々に疲れ果てる将棋でした。

・・・それにしても、今から見直せばよくあの飛車詰んだ局面から逆転できたものだと思います。県代表同士でも、あきらめなければごく稀にこういうこともあるんですね。最近は淡白な将棋が多かったのですが、もっと粘るようにしないといけませんね。

 

 

これで2年連続の決勝進出。お相手は元奨励会三段のK氏。県代表を獲るための、最後にして最大の壁に対峙することになりました。

 

 

 (続く)

 

 

2018.5.13 県名人戦 その1

アマ名人戦全国大会、東北六県大会の県代表を決める表記の大会に出てきました。

 

2週にわたって行われる大会で、1週目はベスト8に進む7人を決め、2週目に前回優勝者を加え準々決勝からのトーナメントで行われます。

 

自分は前回大会運よく優勝したので2週目からの登場。2連覇を狙う戦いです。

 

 

準々決勝

 

抽選の結果、お相手は超有名アマ強豪を兄に持つN氏。進学先から就職で出身県に戻ってきた最近の自分の県ではよくあるパターンです。

 

N氏得意の四間飛車居飛車穴熊で対抗して下図。(先後反転しています)

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銀冠に組むこの瞬間がチャンスと見て仕掛けます。

☖7五歩☗同歩☖同角☗7八飛☖7六歩☗8八角☖7二飛。

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通常、上の図から☗7六飛でよく言われる「飛車と飛車の間に駒が挟まった方が悪い」図になるのですが、この場合は4七の金が浮いている事、かつこちらの金が3一であるため5七角成が成立するため不可。ここから☗3八金☖8六歩と進む本譜の進行なら仕掛けは成立してたのかなと思います。

 

ちょっと進んで下図。

 

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こちらの方針としては、振り飛車の動きを封じて8七のと金を活用できれば自然と勝ちになるだろうという大局観。少しいいかなと考えていたのですが、ここで☗1五歩☖同歩☗1三歩☖同香☗2五桂と端にちょっかい出されると角が質駒になっていることもあり難しい、というのが感想戦での結論。

本譜はここから☗2五歩☖3三金で怖い所がなくなり優勢を意識。4三の金が浮いている事と将来の端攻めがネックだったのですが、どちらもいっぺんに解消できました。

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憂いが無くなったらあとは殴るだけ。縦や端が絡まず、横からの攻め合いになった時の穴熊の信頼感たるや。

結果的に8七のと金を寄せていき理想的な局面ができあがりました。

たまにこういう勝ち方できるとやっぱり穴熊やめられねーわってなります。

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秒読みになる事無く勝利し準決勝へ。対戦相手は支部名県予選で負かされたS氏。リベンジといきたいところですがどうなるか。

 

(続く)

 

2018.4月読んだ本

4月はホント忙しかった。まさかの3冊のみ。

 

北山猛邦  踊るジョーカー

 

感想:

”気弱すぎる名探偵”音野順シリーズの第1作目。自分はうっかり2作目から読んだのですが、問題なく楽しめました。

タイトルになっている「踊るジョーカー」は流石の出来栄え。密室モノでこのプロットは初めて見ました。

その他の短編もなかなか凝ったネタが扱われていて堪能できました。

 

 

早坂吝  虹の歯ブラシ

 

感想:

メフィスト賞受賞作の「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」の探偵役、”援交探偵”上木らいちを主人公とした連作短編集。

前作はぶっ飛んだ仕掛けが用意されていましたが、今回も期待通り「青は海とマニキュアの色」で壮絶なバカトリック(褒め言葉)にしてやられました。

しかし、それで終わらないのが本作の恐ろしい所。全編通して違和感を覚えながら読み進めていたのですが、最終章でそれらが一気に回収される怒涛の展開は圧巻。オチに関しては好みの分かれるところかとは思いますが、肩の力を抜いて楽しめる一冊です。

 

 

北野新太  等身の棋士

 

感想:

「透明の棋士」に続く2作目。将棋界に訪れた藤井ブームの裏側や、棋士人生の岐路に立った棋士たちの内面を鋭く切り取った一作です。

正直、ここ最近は仕事が忙しいのもあって、全く将棋に触れられずに熱が冷めつつあったのですが、再燃のきっかけとなりそうな一冊でした。