ねいぴあの雑記帳

ドミニオンとか将棋とかミステリとか脈絡のない雑記帳

藤原伊織「テロリストのパラソル」読了

過去に「名作」という評価を複数目にしていて、最近古本屋でタイトルを見かけて衝動買いした本書「テロリストのパラソル」。読んでみて納得。
本格ミステリというよりかはハードボイルドとしての側面が大きい作品ですが、暴力描写は少なめですし、そもそもハードボイルドも好きなので拒絶反応はなく読めました。

以下あらすじと感想をば。

アル中のバーテン島村は、新宿の公園で爆弾テロ事件に巻き込まれる。死傷者50名以上の大惨事となったが、犠牲者の中には警察庁の公安課長に加え、20年以上音信不通だった元恋人と親友が含まれていた。容疑者として追われながらも、島村はテロ事件の真相に迫ろうと奮闘するーーーーー


まず、文章がイイ。淡々としていながらも、グイグイ物語に引き込まれていきます。時間を忘れて読み耽りました。
そしてキャラ造詣も上手い。主人公の島村をはじめ、事件を追う最中に関わっていく人々皆いい味をだしています。

ストーリーは様々な謎を孕み、ときには解決もしますが、テロ事件の首謀者とその目的は謎のまま、息つく暇もないままラストまで走り続けます。そしてラストで明かされる真相はなかなかに強烈。情報量が多く、整理しながら読み進めていくうちに唐突に答えを突き出されたためにぶったまげました。ややご都合主義めいた部分はありますが、許容範囲でしょう。
最初から最後まで、疾走感満点の物語で、読後のリーダビリティは相当の良作でした。

ただ一点、よくわからなかった点があります。ラストで島村がした"忘れ物"の理由がイマイチ腑に落ちないというか。何故島村は心変わりをしたのでしょうか。その部分だけ、自分のなかで消化しきれていないのです。いつか納得のいく説明がつけられるよう、考えるなり調べるなりしておこうと思います。