ねいぴあの雑記帳

ドミニオンとか将棋とかミステリとか脈絡のない雑記帳

2018.1月 読んだ本

どこまで続くかわかりませんが、月ごとに読み終えた本の感想でも挙げていこうかなと思います。基本的にミステリ多め。あらすじが書いてあったりなかったりするのは感想書くタイミングでの気力の問題です・・・

 

1月は年始の休みで結構読めた月でした。

 

 

白井智之 人間の顔は食べづらい

 

感想:著者のデビュー作。食用クローン人間が合法化された世界での特殊設定ミステリ。一点だけ、犯人視点でツッコミ所はあるものの、それ以外はこの世界ならではの展開や、仕掛けが上手く噛み合ってリーダビリティの高い仕上がりかと思います。

グロ描写がちょっとだけあるのでその点は注意かも。

 

謎の館へようこそ 黒

 

感想:「館」をテーマにした、講談社タイガから出版された短編集。同タイトルの「白」も刊行されてます。黒の方は読者を選ぶかも。個人的ベストはネタでは白井智之の首無館の殺人、ストーリーでは井上真偽の囚人館の惨劇。

 

深水黎一郎 ミステリーアリーナ

 

感想:多重解決をテーマに据えた意欲作。舞台設定も踏まえて、発想の勝利でしょう。このテーマにおける傑作。

 

天袮涼 キョウカンカク

 

感想:メフィスト賞受賞作家、天袮涼のデビュー作。「音が視える」共感覚の持ち主を探偵役としたシリーズ第1作でもあります。探偵役の音宮美夜や、依頼人の矢萩のキャラがたっていて、サクサク読み進めることができました。

最終盤で明かされる、様々な謎を解く鍵となる犯人の動機は衝撃的で、満足度の高い一冊。

 

天袮涼 闇ツキチルドレン

 

感想:「キョウカンカク」シリーズ2作目。四面楚歌の状態から美夜が紡ぎ出す真相はなかなか見事。…と思いきや、その後に色々な意味で度肝を抜かれました。

矢萩さんの意味深なセリフもあり、続編読むのが楽しみ。

 

深水黎一郎 エコール・ド・パリ殺人事件

 

あらすじと感想:芸術探偵シリーズの一作目。「呪われた芸術家たち」とまで呼ばれた、通称エコール・ド・パリの一段に魅せられた画廊の社長が自宅の一室で刺殺体となって発見された。部屋の窓下には犯人の足跡はあるものの、その窓は閂で閉ざされ、そこには何故か被害者の血が塗り込められていたーーー

「読者が犯人」という禁断のテーマに挑戦したデビュー作とはうってかわって、ベッタベタな雰囲気の著者の第2長編です。タイトルにもはいっている、ある芸術家の一集団に作中作の形で触れらていますが、芸術とは無縁の私でも楽しく読み進めていくことができました。

ただ、その作中作と、破滅的な捜査陣のあるキャラクターを除いては、ストーリーの展開は地味な印象。ところが、読者への挑戦状を挟んでからの急展開は圧巻の一言。まったく想定していない真相にはやられました。

芸術とミステリが融合した傑作です。

なお、破滅的なキャラクターは著者の別作品で「大べし見警部の事件簿」で主役として登場し、ミステリのお約束を破壊する怪作に仕上がっています。

 

加納朋子 ななつのこ

 

感想:第三回鮎川哲也賞受賞作。作家と女子大生の文通を通して描かれる、連作短編集です。

作中で語られる、文通のキッカケになる作品も本作のタイトルと同一で、しかも本作も作中の「ななつのこ」も、似たような謎が扱われるユニークな作りになっています。

あまり他のミステリでは見られない、透き通った情景描写や、予定調和のような結末と相まって、読み終わると心が洗われる、そんな一冊です。

 

島朗 島研ノート 心の鍛え方

 

感想:伝説の研究会"島研"のリーダー的存在の島九段の綴る、メンタルの強さを軸としたエッセイ集。将棋に限らず、勝負事に関わる人は読んで損はないかと。惜しむらくは、下り坂の今ではなく、上昇志向の強かった高校生の時に読みたかった。

 

大山誠一郎  密室蒐集家

 

感想:密室蒐集家なる、密室に絡む謎が起きるとどこからともなく現れる不思議な存在を探偵役とする、タイトル通り「密室」をテーマにした短編集。各編に通じてなのですが、細やかな手かがりから導き出される密室蒐集家の解決は見事の一言。謎とその解明に特化し、その他の描写は可能な限り削ぎ落とした自分好みのミステリです。

個人的ベストは"何故密室はつくられるのか"に特化した講義が語られる「理由ありの密室」。