ねいぴあの雑記帳

ドミニオンとか将棋とかミステリとか脈絡のない雑記帳

2018.7月 読んだ本

早坂吝 探偵AIのリアル・ディープラーニング

 

あらすじと感想:

人工知能の研究者だった父が、「探偵」と「犯人」、双子のAIを遺して謎の死を遂げた。高校生の息子:輔は探偵のAI:相以(アイ)とともに父の死の真相を探るが、犯人のAI:以相(イア)を奪い悪用するテロリスト集団の陰謀に巻き込まれていく・・・

 

作中でも触れられていますが、探偵(推理小説のような事件を扱う探偵)とAI:人工知能の相性はいいのかもしれません。推理小説電子書籍というビックデータが教師役になり得るのはこのご時世ならではの着眼点ですよね。

 

とはいえ、事はそう簡単ではなく、作中での相以はAIならではの種々の問題点に突き当たります。これは犯人のAI:以相も同様で、AIが成長するにあたり発生する課題がわかりやすくまとめられており、その点も好感が持てる作品でした。

 

いくつかの現実世界の事件を解決し、相以が成長していく様はまさに「リアル・ディープラーニング」。そして最終章での”中国語の部屋”でのゲームの結末は、これまでの物語を踏まえた印象的な仕上がりになっており、大満足の一冊。

 

もしかしたら、今後の『探偵』像へ影響を与える記念碑的な一冊・・・に将来なるのかもしれません。

 

 

新井紀子 AI vs 教科書が読めない子どもたち

 

感想:

たまにはこういうミステリ以外も読んでみたくなることもあり、何かと話題になっている本書をチョイス。

前半ではAIにできること・できないことが、AIを東京大学に合格させるというプロジェクトの中で突きあたった課題とその解決を通して、また、現代数学の限界を示しながら非常にわかりやすく書かれている印象。

そしてメインの後半は著者が開発したRST(リーディングスキルテスト)の結果を踏まえながら、こどもたちの読解力について触れられていますが、その結果たるや・・・

RSTで実際に出題される問題は本書に数例掲載されているのですが、正直「このレベルの問題でこの正答率か」と軽い失望感を覚えるような結果がでています。

 

本書の中では、人類の発展の歴史の中で失われてきた職業に触れ、昨今のAIブームによりやはり必要性のない職種が増えて来ること、そしてその数はこれまでの「失業の歴史」で失われた職業の数の比ではないこと 、ではAIに置換されない職業はどのようなものがあるか、どういう分野で強みを発揮する人がそのような職業に適性があるかということにも触れられています。

そして、上記のようなRSTでの結果を見る限りでは大半の人があまり明るくない未来が待ち受けているように思われます。

 

職業というものが大きく変容するかもしれないこの先に向けてどのような能力を身につけるべきか、今お子さんをお持ちの方でも、そうでない方でも、一度読んでおいてほしい一冊です。

 

 

佐藤優 国家の罠

 

感想:

たまにはミステリ以外を第2弾。

鈴木宗男事件絡みで逮捕された元外交官の筆者が、現役時代にどのような諜報活動を行ってきたのかを楽しみに読み始めたのですが、期待したよりもその描写が少なかったのは残念。

ただし、それを補って余りある外務省内・国会議員とのパワーゲーム、検察官との取り調べの描写は大満足。

 

また、作中で筆者の述べる「国策捜査」の定義にはなかなか考えさせられるものがあり、また似たような事件があるたびに思い出すことになりそうです。

 

文庫版で500ページ超えとなかなかボリュームがありましたが、引き込まれる筆致で一気に読み切ることができました。