2020.1.12 県王将戦
県棋界には、通称”三大タイトル”と呼ばれている別格の大会があります。
「県王将戦」・「有段者選手権」・「県名人戦」がその3つで、1週目に予選会で準々決勝進出者を決め、2週目に決勝大会で準々決勝からのトーナメントを行う2日制であるとともに、優勝者は東北六県大会の代表権が与えられる大会です。
三大タイトルが発足してから50年以上たちますが、上記のタイトルをそれぞれ1回以上獲得した人、つまりグランドスラム達成者(これは自分が勝手に名付けているだけ)は10人ほどしかいません。
自分はこの県王将戦を優勝すれば達成となります。ここ何年かそういう状況が続いており、また、同年代のライバルが先に達成している事もあったため、密かに燃えていました。
予選会の日、風邪で体調ボロボロで、道中中学生の子に負けて”今年はダメかな”と思ったのですが、敗者復活制度とくじ運に助けられてなんとか2週目へ。
2週目の準々決勝から振り返っていきます。
○準々決勝
対局相手はM氏。兄弟で将棋をやっていて、今回は兄の方。弟が昨年の中学生名人戦で準優勝しており血統的に侮れません。
三間飛車にelmo囲いで下図。
仕掛け周辺で誤算があり、微妙な局面にしてしまったと後悔していた局面。
そしてここから☗5五歩としてしまったのが形勢悪化に拍車を掛けた一着で、以下☖同歩☗同銀☖5四歩☗4六銀に・・・
☖4四歩☗同歩☖同銀☗4五歩☖5五銀☗同銀☖同歩☗同角☖5二飛でシビレ。
居飛車対四間飛車の☗4五歩早仕掛けで、類似形ありましたよねそういえば。
この後はお相手に終盤にミスが出て逆転勝ち。
○準決勝
お相手はN氏。同門の後輩で、県代表経験がありコンスタントに勝っているイメージ。優勝するには避けては通れない相手と思っていました。
後手番で角換わり相腰掛銀から趣向を出した後に組み合って下図。
☗7四歩☖同銀☗6四飛☖6三銀☗6九飛☖6四歩のワンセットの手順を経た図で、後手番のためもう一回その順をやられたら千日手にするか打開するかはそうなったら考えようと思っていました。
本譜は上の図から☗4五歩。
上記手順の☗6四飛が両取りになるようにした意味の手ですが、ここはチャンス。
☗4五歩に☖同歩☗同桂☖4六歩が急所の一撃。
続いて、☗5六銀☖4一飛☗5七銀☖9二角が会心の手順。
☗6五歩☖同桂☗4六銀で耐えようとするも☖7七桂成☗同金☖5六角☗4七歩☖4五角☗同銀☖同飛で勝勢。
太字にした3手が絶品でした。
以下は自玉の堅さを保つことを最優先に慎重に指して勝ち。
○決勝戦
決勝戦のお相手はK県連会長。約1年前に県連会長の要職に就き、決してプレイヤーとしては全盛期ではないはずですが去年もこの大会で決勝まで残っているお元気な大ベテランです。
将棋はK氏得意の矢倉模様。後手番を引いた自分の選択は県名人戦決勝のときにもチョイスした米長流急戦矢倉。
下図からは定跡講座。
☖5五歩や☖4五歩は8六角の利きが強くうまくいかないため、別の手段が必要。
相居飛車ではあまり見ない筋ですが、☖8六歩☗同歩☖8五歩☗同歩☖同飛☗8六歩☖2五飛。
ここから☗3六歩☖3五歩☗3七銀が並の進行ですが、本譜は☗3七銀☖3五銀☗3六歩☖2六銀☗同銀☖4五飛☗4六銀☖9五飛と進行。
この地点に飛車が逃げられるので☖2五飛が成立していると記憶していたのですが、対局中は経験豊富なK氏に虎の巻的な用意の手順があるのでは・・・と震えていました。
対局後に確認したらうっかりしたとのことでしたが、疑心暗鬼になったおかげで楽観しすぎることなく集中して指せたのは幸いでした。
最終盤の下図。
本線の読みはここから☖7七角成でしたが、☗同金で意外と難しいと感じていました。
時間も無い中でここで☖6七角成☗同玉☖7七角成の手順を発見できたのが幸運でした。
☗同玉は☖5六金があるため確実に竜ができます。
以下はそのまま押し切って優勝することができました。
急所の場面での得意戦法はやはり頼りになります。
悲願だったグランドスラムを達成し、二年連続で六県大会の代表を獲得。
六県大会は最近勝ち越しできていないのでどうにかしたいものです。
・・・それにしても最近怖いくらい勝てていますが、そのうち絶対に反動はくるのでそのときまでにどれだけ稼げるか。
せめて3月の朝日の全国大会までは勢いが続いてほしいものです。